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「映画を早送りで観る人たち〜ファスト映画・ネタバレ──コンテンツ消費の現在形」稲田豊史

タイトルどおりの本ですが、内容はとても濃くて、いろいろ考えさせられてしまいました。

特に若い世代が、映画やドラマを早送りで見るという習慣を持っているらしい。
その理由はなにか。
著者の稲田さんが多くの取材をもとに、仮説を立てています。
1 見るべき作品が多すぎる
2 作品自体が説明過多なので早送りで充分
3 早送りでも見ておかないと仲間との話について行けない

私の場合、1についてはもうあきらめていて、逆にほとんどの映画やドラマを見ないことにしていました。
2についても、説明過多なものは逆にめんどくさいので見ないようになっています。
3については、特に仲間がいないので考慮する必要がない。

結果、映画などをほとんど見ない私よりも、早送りしてでも見ている人の方がきちんとしているような気もします。

さらに取材から浮かび上がってきたのは、「自分にとって快適なものだけを摂取したい」という若い世代の考え方だと言います。
見ていてつらくなるシーンなどをできるだけ排除して、見たいところだけを見たい。

もっと直接的に「倍速視聴は感情移入しにくくなるから良い」という大学生もいた。普通に考えれば、感情移入が阻害されるのは作品鑑賞にとってマイナスのはずだが、心を揺さぶられないフラットな気持ちで鑑賞するためには、そのほうがいい。心のカロリーをあまり使いたくない。感情を節約したい。経済運転でいきたい。そのためには、あえて作品世界に入り込まないほうがいい、というわけだ。

これはよくわかる。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」なんてもう一回見るなら倍速でしか見たくない。

1974年生まれの稲田さんは、できるだけ公平なスタンスで書いていくのですが、それでもどうしても「映画を早送りで見るなんて、いったいどういうことなのだろう?」と最後につぶやいてしまう。

私はどちらかといえば、倍速でもいいんじゃないかな、という立場。
というか、こんな方法を教えてもらってありがたい、という若干おめでたい感じ。

視聴方法が映画館から手元のタブレット、スマートフォンに変わってきてしまった以上、映画の見方も変わっていくのは当然なのかな。
そもそもすべての映画を見ることができない以上、見るべき映画の選定にあたって倍速試聴を行い、気に入ったものをもう一度通常で見るというのはアリかも知れません。
稲田さんの提案する認可済の「ファスト映画」ができてもいい。

ただ、古い価値観の者からすると、最初からまっさらな状態で通常速度で見ないと、なにか「もったいない」気がしてしまうのも事実なので、なかなか再生速度が加速できないのです。
貧乏性なのでしょうね。

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