村上春樹
精神的にも肉体的にもにっちもさっちもいかない状況で、いつか読み直そうと思っていたこの本を久し振りに読んだ。
たぶん通して読んだのは出版されてすぐに読んで以来だと思う。
最初に読んだときは、あまりに物語の世界が深く、広いことにたじたじしながら、ただすごい、と思いながら読んだ印象だった。
今回読んだ感想は、よくできている小説だし、今この小説を読んでおくべきだ、という勘は正しかった、ということだ。
この小説についてはいろいろな解釈が出ているのだろうけれど、今回、わたしはコミュニケーションの難しさ、回復の方法ということを中心にしながら読んでいた。
そうすると、以前読んだときにはよく分からなかったことがありありと分かってきた。
水、カティーサーク、井戸、予言をする人物。その他いろんなものが、一回ではなく、別のかたちで何度も何度も出てくることによって、作者はこれが重要なヒントだよ、と教えてくれるのだ。
たくさんある村上春樹解説本でもひもといて、謎ときをしたい誘惑にも駆られたが、今のわたしにはこの小説の中に入り込み、物語を自分の中に満たす必要があったから、それはしないでおいた。
頭ではなく、身体でこの小説を受け止めたい、とちょっとかっこつけたりしたかったのである。
ぐったりした。
久し振りに本を読んだ、という達成感がした。
物語の中で主人公がなんども経験する夢精まではしなかったけれども。
第三部は理が勝っている印象で、第二部までに較べると今のわたしにはちょっと落ちる。
もちろんそれでも総体としてすばらしい。
じぶんの危機を救うかも、と思われる読書でした。
しばらくしてから解説本でも読んでみよう。
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