ジェームス・アイボリー監督
E・M・フォスターの同名小説を映画化した名匠ジェームズ・アイボリー監督の出世作。20世紀初頭、まだ封建的思想の色濃いイギリスの名家の令嬢ルーシー(ヘレナ・ボナム・カーター)は、フィレンツェ旅行に赴いた際、ホテルの眺めのいい部屋を譲ってくれた情熱的な青年ジョージ(ジュリアン・サンズ)とやがて恋に落ちていく。しかし帰国後、彼女は名門の紳士と婚約するはめになり…。
異国を訪れた女性の心理状況が繊細に描かれ、アイヴォリー作品ならではの静かで落ち着いた独特の格調と品格が映画的な潤いを与える。ヒロインと行動を共にする従姉役の名優マギー・スミスが絶品。アカデミー賞では脚色・美術監督装置・衣裳デザイン賞を受賞。(的田也寸志)(AmazonのDVD評から引用)
ルーシーは名家の令嬢で、形式的な上流階級的なふるまいを余儀なくされているけれど、それが正しいふるまいなのか疑問を持っている。
ルーシーの婚約者であるセシルはやはり上級階級であり、そのふるまいには疑問を持っていない。音楽や文学、絵画が好きだが、醜いものが嫌い。
ジョージはそれよりも低い階級の若者だが、フランクで情熱的。
映画の中で、セシルは今のわれわれの目から見るといやなやつとしか見えないし、ルーシーはジョージと結ばれるべきだ、と思う。
ジョージはルーシーに、セシルとの婚約を解消するように言う。
「だが彼は他人と親密になれない男だ。女性を理解できない」
私はセシルよりは他人と親密になれるような気がする。
しかし、そうだろうか。
この映画の舞台となった100年前と環境こそ変わっても、人間はそんなに変わっていない。
形式的なものに頼って、結局自分の中身を外にさらけ出さず、からに閉じこもっている人。
じぶんの考えや感覚で世間と向かい合っている人。
いろんなタイプの人がいることは変わらない。
セシルをいやなやつと思っても、それはじぶんのことだからかもしれなかった。
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