佐々木中
本としてはかなりの価格だし、相当難しそうだし、と購入に二の足を踏んでいたが、『切り取れ、あの祈る手を』を読んでしまった以上手を出さないわけにはいかなかった。
まず、最初に私は今の段階でこの本について要約したり、説明したりすることはできない、ということを書いておく。
本を読んだ、というよりは、ただページを繰り続けただけなのだ。
分からない言葉、少しは理解しうる言葉をごちゃ混ぜにしながら私の中を通過していった。
おそらく、もっと丁寧に読めばそれほど難しいことが書かれているわけではないと思う。
ラカンもフーコーもまるでわかっていない私のような者にも精密に説明をしてくれている。
私は難しい本を読むときはだいたい線を引いたり書き込みをする。
しかし今回はあえてそれをしなかった。
たぶんこの本は何度も読まなくてはいけない、と思ったから。
最初は文体のスピードを味わうだけにしよう、と決めたのだ。
命がけで本を読むべしと言う佐々木さんにはたぶん怒られるとは思うが、まずこの文体を味わうことにしたかったのだ。
とは言ったものの、たぶん途中でわけが分からなくなって挫折するとどこかで思っていた。
しかし、なぜなのか、結局最後までページをめくり続けることができてしまった。
いったい何なのか。この文章の力は。
こういう経験は初めてだった気がする。
こんな分厚い本を内容をほとんど理解できないまま読み続けるというのはいったいどういうことか。
ページをめくりながら、えらく重要なことが書かれていて、しかもそれは私にとってプラスとなることなのだ、というよくわからない気持ちがどんどんふくれていったのだ。
とにかく、私はなにも分からないことがよく分かった。
それでも私は何かひどく興奮している。
とにかく、いつかきちんともう一度読み込みたい。
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