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『都市と都市』

チャイナ・ミレヴィル 日暮雅通訳 ハヤカワ文庫

 

ヨーロッパにあるふたつの都市国家ベジェルとウル・コーマの間で起こった殺人事件を巡るミステリーとSFの間の小説。
ほぼ現代の話ですが設定はもちろん架空。
当然ベルリンやエルサレムや朝鮮半島などを想像しながら読んでいくと、設定はもっと奇妙なことになっています。
二つの国家はほとんど同じ位置にあり、領土は入り組み折り重なっている。
しかしベジェル人はウル・コーマ人のそばを物理的にすれ違ったとしてもその姿は「見えない」。
正確に言うと見ないように厳しく訓練されてきているのです。

見てはいけない。
もちろんウル・コーマ人もそう。
建物も見てはいけない。
その禁を破る侵犯行為は「ブリーチ行為」と呼ばれ、両国家の上位に立つような組織「ブリーチ」が処罰し、その行為を消し去る。
ブリーチ行為には両国の政府、警察は手は出せない。
ブリーチという組織は神の比喩か、と読み進めながら思ったりしました。
解説で大森望さんがおっしゃるように「裸の王様」のお話ですが、強引な設定なのにそのうち実在するように思わせるのがすごい。
それぞれの国のお国柄や歴史、生活感などをきちんと描いています。
国家自体についての話をこんなふうに書く手法があったとは驚きました。
ストーリーは、警部補=私が事件の謎を追えばまた謎が現れ、と引っ張っていきます。
ミステリーなので当然解決があるわけですが、最後は何となくありがちな大団円という気がしました。
私としては事件は置いといても、もっと二つの国の話を続けてほしかった気がします。

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