村上春樹
あらすじ
「私」は肖像画の画家。妻と別れ、肖像画を描くことをやめ、友人の父で高名な日本画家である雨田具彦が小田原でアトリエとして使っていた一軒家に住むことになった。谷を隔てた豪邸に住む「免色」さんから法外な価格で肖像画を描いてほしいという依頼を受ける。家の屋根裏部屋である雨田具彦の『騎士団長殺し』という未発表の絵を発見する。家の裏の祠から鈴の音が聞こえてくる。祠のそばの石が置かれた地面を重機で掘り返すとそこには何のために作られたかわからない、円形の石室があった。そしてイデアである騎士団長が現れて……
ほとんど一気に読み干した。
いつもの村上春樹だったなあ、というのが感想です。
- 『ねじ巻き鳥クロニクル』の井戸と類似した『雑木林の中の穴』。
- オーストリア併合(アンシェルス)や南京大虐殺といった歴史の挿入は『ねじ巻き鳥』のノモンハンと似ている。
- 自動車への愛と憎しみ。プリウスやジャガーやスバル・フォレスター。
- おいしそうな料理。こんなかんたんに書かれているのにおいしそうなのはなぜだ。
夕食にはソーセージとキャベツを茹でたものに、マカロニを入れて食べた。トマトとアボカドと玉葱のサラダも食べた。(p202)
- 村上春樹を読んでいると、ふだんあまり聴かないクラシック音楽を聴きたくなる。さっそくリヒャルト・シュトラウスのCDを手に入れることにした。
- 主人公が地獄巡りをするのだが、『神曲』でもあるし、ドラゴンクエスト的なRPGでもある。
- 少女まりえは『1Q84』のふかえりを思わせる話し方。
「私」が痛めつけられながら再生、成長していく物語。
もちろん面白いのだけれど、長編を出すたびにぐいぐいと小説の可能性を広げてきたことを考えると、少し物足りないような気がした。
いつもの手駒を使ってきたかなあ、という感じ。
しかしこれはたぶんきちんと読めていないからで、再読すると違って見える部分があるのだろう。
今までそうやって村上春樹の小説と向かい合ってきたのだから。
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