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『集中力はいらない』

森博嗣 SB新書

 

ぼくは集中ができない。
勉強をしていても、仕事をしていてもすぐ飽きてしまって放り出してしまう(表面上はやっているふりをしてきた)。
そのことを弱点だと思ってずっと生きてきましたので、読んでみました。

森さんは以前は大学の教官の傍らミステリ小説の執筆をしていました。
どちらも発想が重要な仕事です。

森さんがこの本で繰り返すのは「思考すること」の大切さです。
集中することは思考を排除することだといいます。

この一つの例(引用者注:自動車の運転のこと)が示すように、「集中」とは、「思考」を排除するものでもあり、さらには、「人間」を排除するものでもある。

これまで、社会が人間に「集中しなさい」と要求したのは、結局は、機械のように働きなさいという意味だったのだから、そろそろその要求自体が意味を失っている時代に差し掛かっているということである。

思考し、新しいことを発想するためにはどうすればいいか?
むしろ対象から距離を置き、きょろきょろする。
集中力とは別の力、いわば分散力、発散力が必要なのだといいます。

『(略)多くのデータをまず見ること、目の前のものや既存の概念に囚われないで、無関係なものをつなげてみたり、常識外れの解釈をしたり、無駄なことに注目したり、さまざまなタブーを頭の中で取り替え引き替え試すような多視点の思考が必要です。もちろん、一方では、それらを客観的に観察し、これだというものを評価し見逃さないことも重要。ですから、きょろきょろとしている人と、その人を監視している人が少なくとも必要で、この人たちが何組も働いているわけです。これを、言葉にすると、「発散」あるいは「分散」みたいな表現になります』

AIが進化するこれから、人間は集中力ではなく、発散型の思考が重要になってくるだろう、と森さんは考えます。

人間の仕事としては、より発散型の思考へシフトし、ときどき発想し、全然関係ないものに着想し、試したり、やり直してみたりすること、あるいは、より多数の視点からの目配りができることなどの能力が、これからは求められるようになるだろう。

集中力はなくてもいい、といっても、SNSに時間をとられていてはだめだ、と森さんは釘を刺します。
すみません。
森さんは会社員ではありませんでしたから、私のような組織の末端で仕事をする者がそのまま使える考え方ではありません。
しかし、それでも仕事の進め方を再検討するのにとっても有意義な本でした。
きょろきょろしつつ、もっと考えることをしなければ、と思います。

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