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『はじめての著作権法』

池村聡

 

「日経文庫」だし、入門書らしい王道のタイトル。

著者の池村さんは弁護士で、文化庁著作権課に出向されていた方です。

どう考えても堅苦しい本に違いありません。

 同様に、「ヤバいよヤバいよ〜」「閉店ガラガラ」といったいわゆる一発ギャグ(一発芸)の類も、通常は著作物とは言えないでしょう(後略)

また、Perfumeのライブで、あーちゃんが「最後の曲は『Puppy love』です!聴いてください!作詞・作曲はもちろんわれらが中田ヤスタカさんです!」なんて風にいちいちMCで紹介しなくても、中田ヤスタカさんの氏名表示権を侵害することにはなりません。

といった小ネタが頻出して、読者を掴んでくれます(本筋よりそちらが楽しみになってきた)。

 

もちろん、きちんと著作権法の基礎、著作権とは何かということから説明してくれるので、何も知らない私にもある程度理解できました(それでもむずかしいところがあるんです)。

著作権をめぐる具体的判例が豊富に盛り込まれているのがおもしろい。

 

また、以下のような世間を騒がせた事件も、理解の手助けとなるトピックとして盛り込まれています。

・「おふくろさん」騒動

・「森のくまさん」騒動

・ゴーストライター事件(佐村河内守さん、新垣隆さん)

・音楽教室 vs JASRAC

・「銀河鉄道999」事件(松本零士さん、槇原敬之さん)

・「記念樹」事件(小林亜星さん、服部克久さん)

・東京五輪エンブレム問題

 

「東京五輪エンブレム問題」ありましたねー。

2020年東京五輪の公式エンブレムに、佐野研二郎さんデザインのものが採用されました。

しかし、そのエンブレムがベルギーの劇場のロゴに類似している、と大騒ぎになり、結局採用が取り消されました。

著作権侵害が成立するためには三つの要件が必要です。

1 著作物性 ベルギーの劇場ロゴは著作物といえるか

2 類似性 佐野さんデザインのエンブレムはベルギーの劇場ロゴの複製または翻案と言える程度に類似しているのか

3 依拠性 佐野さんはベルギーの劇場ロゴのことを知った上でエンブレムをデザインしたのか

池村さんや他の著作権関係者の大半の意見は、3つの要件いずれについても侵害しているといえないだろう、というものだそうです。

しかし、当時のワイドショーやインターネットの中では「著作権侵害」だと佐野さんを猛烈にバッシングしていたように思います。

このように、著作権侵害ではないにもかかわらず、あたかも著作権侵害かのような形で世の中的に”炎上”してしまうことは、本来法律が予定している範囲を超えた制約が事実上働くという意味において、決して望ましいことではありません。こうした法律と現実のギャップの原因の一つとしては、著作権に対する基本的な知識が国民に十分浸透していないことにあるように思えてなりません。

 

著作権についてはほとんど知らないのにもかかわらず、だいたいのことを知っている気でいました。

だけど「市販の音楽CDに収録されているような楽曲に関しては、作詞家や作曲家自身が著作権を持っているというケースは実は極めて希」だなんて、恥ずかしながら初めて知りました……

著作権の基礎的な部分だけでももっと知っておくべきだったなあ、と反省しました。

誰もが簡単に情報を発信できる時代、著作権についての基本くらい知っておかないと困ることが多くなっているような気がします。

 

さて、本書からずいぶん引用してしまいましたが、この記事は著作権侵害していないですよね?

少し心配です。

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