四方田犬彦 潮出版社
先日読んだ『日本の漫画への感謝』の続編です。
前作は、戦後の漫画家を中心としたエッセーでした。
本書は「六〇年代後半から九〇年代にいたる漫画家たちの列伝」。
漫画家29名が取り上げられていますが、私が知っている漫画家はやはり半数に満たなかった。
1968年はベトナム戦争やフランスの学生運動など、世界が大きく動いた年。
その年日本の漫画は急速に発展したのだ、と四方田さんはいいます。
「ガロ」や「COM 」といった雑誌で活躍した漫画家を中心にして、世代順に書かれていきます。
私は世代的に完全に遅れているので、知らない人ばかりだなあ。
と思ったら、佐々木マキさんからスタート。
村上春樹さんの「羊男」などのイラストで知っていましたが、漫画を描いていたのです。
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しかも、漫画ではとんでもなく前衛的なことをやっていたのでした。
さらに、私は佐々木さんのことをずうっと女性だと思い込んでいたのです。
私は何も知らなすぎます。
岡田史子のことも知らなかったのですが、引き込まれるように読みました。
1967年、高校生のときに「COM」にデビュー。
「先人の文学的伝統の延長上に漫画を執筆しよう」とする作風の漫画家でした。
デビュー後わずか4年で筆を折り、結婚し離婚しふるさとの北海道に戻ります。
しばらくしてからいったん復帰するのですが、また行方が分からなくなります。
四方田さんは手を尽くして行方を捜し、彼女をようやく探し当てます。
当時、彼女はキリスト教に帰依しており、教会で面会を果たします。
そして彼女から生原稿を預かり、二冊の作品集を刊行します。
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彼女は離婚し,棄教し、精神病院に入った。皮肉にもそれは、彼女が漫画の中で繰り返し描いてきた場所だった。退院すると東京へ出て、漫画雑誌の新人賞に応募した。審査員の年少の漫画家は、応募者名に「岡田史子」とあるのを発見して、驚きのあまり言葉を失った。
そして、岡田史子は2005年に55歳の若さで心臓病で亡くなったそうです。
つげ義春、永井豪、手塚治虫といった、メジャーな作家の話ももちろんおもしろいのですが、宮谷一彦、樋口太郎、宮西計三といった初めて知る作家たちの先鋭的な方法の紹介に刺激を受けました。
黒田硫黄、そして岡崎京子でこの本は締めくくられます。
取り上げられている作家の世代が前作よりも自分に近いこともあって、ますます作品を読みたくなってしまうブックガイドとなっています。
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