宇野維正 岩波書店
小沢健二さんとは同世代に属する者です。
前世紀末に彼が姿を見せなくなってからも、ずっと気になっていました。
「僕らが旅に出る理由」をカラオケに行くとほぼ必ず歌う程度には。
昨年の突然の復活(と思った)は喜ばしいものでした。
宇野さんは、音楽雑誌の編集者兼ライターを経て独立された方です。
フリッパーズ・ギターの初期の活動の頃から「小沢健二の重力圏」で生活していたといいます。
そんな宇野さんが「小沢健二の空白期」を中心に、2017年に本格的に活動を再開させるまでを描いた本です。
二〇一七年に入って、小沢健二は本格的に活動を再開させた。(中略)
したがって、当初、「小沢健二の空白期」についてその時点でのすべての一次資料と自身の体験を元に考察をめぐらせていく予定だった本書を、自分は「空白期」の「終わり」と新しい季節の「始まり」を見届けてから書き始めることとなった。「流動体について」のCDを最初に聴き終えた後、それまでに候補として考えていたいくつかの仮題すべてに赤い線を引いて、その上に思いっきり大きな文字でこう書いてみた。
「小沢健二の帰還」
その時に心の底からわいてきた歓喜と勇気のことは、この先もずっと忘れられないだろう。
「音楽の人」である小沢健二が本格的に帰ってきたことへの歓喜と、「言葉の人」でもある小沢健二について言葉を紡ぐ勇気。その二つを原動力として、まるで熱に浮かされたようにこの本は書かれた。
(「はじめに」) 小沢さんがどうして「空白期」に入ることになったのか、そして空白期になにがあったのか、などきちんと調べられており、深い考察も加えられています。
小沢さんの文章がすばらしいことや、彼の音楽への情熱などが熱く語られています。
しかし「熱に浮かされたよう」な文章を読まされると、醒めてしまいます。
小沢さんを気にしていた程度の者には、微妙な読後感でした。
空白期にどういうことがあったのかが分かったのはよかった。
小沢健二が大好きな人のためにはぴったりの本です。
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