森元斎(もとなお) ちくま新書
最近よく読んでいる、アナキスト栗原康さんの流れで読んでみることにしました。
アナキズムとは何か。
森さんは、鶴見俊輔の次のような定義を引きます。
「アナキズムは、権力による強制なしに人間が互いに助けあって生きてゆくことを理想とする思想」
アナーキーというと無政府主義、という言葉が浮かびますが、それよりも「相互扶助」がキーワードとなるようです。
プルードン、バクーニン、クロポトキン、ルクリュ、マフノの5人の生き様を描きます。
みんな個性的で、人がよくて、疾走しまくります。
いっぽう、マルクスは「嫌な奴」と言われてしまいます。
すこしかわいそう。
フランス革命のあと、フランスやロシアからアナキズムは登場します。
革命のあとフランスの国柄がどうなるかと権力闘争の中で、アナキズムが天下を取った可能性もあったのかもしれない、と想像すると楽しい(定義からして権力闘争に勝つことはないのだけれど)。
一瞬のきらめきだった「パリ・コミューン」はその可能性を見せてくれたのでした。
成功していれば、アナキズムは私たちの現実的な選択肢になっていたのかもしれません。
しかし、そうはならなかった。
森さんの描くアナキストたちの生き様は、どれもおもしろくてあこがれる。
しかし、結局誰ひとりその企みが成功することはありませんでした。
むしろアナキズムは成功しないことに存在意義があるのではないのだろうか、とさえ思えます。
かといって、アナキズムは社会を変革する原理であって、単なる生き方の指針のようなものではないはず。
アナキズムが鶴見俊輔の定義どおりのものだとしたら、新自由主義なんかよりずっと支持されるはず。
なのに、なぜいつもうまくいかないのか。
権力の力が強すぎるせいだけなのか?
今の野党がなぜこんなに弱いのか?、と同じくらい問いつめたいことです。
アナキズムにはシンパシーを感じています。
次は、アナキズムを現実に適用できる方法が書かれている本を読んでみたい。
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