高橋源一郎 講談社
「戦後文学」というと野間宏や椎名麟三、梅崎春生といった作家の小説をつまみ食いするように読んだ程度です。
私にとっては「暗くて重い」のが戦後文学のイメージ。
安部公房も戦後文学に含まれるのかもしれないけど、自分の中ではちょっと違う。
高橋さんはなぜ現代に戦後文学をテーマにした小説を書き始めたのでしょうか?
「戦後」からも「文学」からも遠く離れてしまった現代なのに。
この作品はそもそも「小説」なのか?
作品の中で「(この文章が)ほんとうに、論文とか評論とかではなくて、よかった」と言っているのだから、小説なのかもしれない。
しかし小説家は本当のことなんて言いそうもないのだから、論文か評論なのかも。
この作品の初出は「群像」2009年10月号から2012年6月号での連載及び2012年7月刊「日本2・0 思想地図β vol.3」。
この作品の連載中に2011年3月の東日本大震災が発生します。
『日本文学盛衰史』が作者自らの入院というアクシデントを取り込んだように、この小説も現実を取り込み続けます。
[amazonjs asin=”4062747812″ locale=”JP” title=”日本文学盛衰史 (講談社文庫)”]
エピローグは、高橋さんらしい「小説」。
そこに至るまでの「評論」的な部分があるからこそ、リアルなものとして受け取ることができる。
「戦後文学」をテーマにした作品が、「戦後」の「文学」になってしまっているのでした。
[amazonjs asin=”4062180111″ locale=”JP” title=”今夜はひとりぼっちかい? 日本文学盛衰史 戦後文学篇”]