加藤陽子
日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、満州事変~日中戦争、太平洋戦争それぞれの戦争を行う決断へ向かった背景を学生との対話形式で描いた本。
戦争は悪だ、というよくあるパターンの思考形式から書かれているわけではないので、風通しがよい。
松岡洋右は例の国際連盟脱退のイメージしかないけど、そこに至るまで非常に理性的な思考、行動を行っていたことが触れられていて、自分がいかに近代の歴史を知らないか思い知らされた。
1930年代から軍部があれだけ力を持っていったか、という問いに対してこれほどシンプルな答えがあるとは思わなかった。
社会民主主義的な改革要求は既存の政治システム化では無理だということで、擬似的な改革推進者としての軍部への国民の人気が高まっていったのです。
なるほど。これって常識なのかもしれないけど、ばかな私はぜんぜんしらなかった。
こんなことを「はじめに」で言われると、一気に引き込まれてしまう。まさにこれは「現代」じゃないですか。
国際連盟や他国と日本の関係をこれだけきちんと押さえた歴史の入門書ははじめて読んだかも。
歴史の本は著者の認識の中で記述、構成されていくから、事実が書かれているのにもかかわらず著者の考えとうまくフィットできないとなんとなく息苦しくなっていくことが多い。
この本は対話形式を使っていることもあるし、他国視点が豊富な資料でわかりやすく書かれていることもあるからそういう閉塞感をうまく逃れているような気がする。
世界の見方を変えるのが書物の役割のひとつとするならば、この本はその意味ですばらしい。
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