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『この世の王国』

アレホ・カルペンティエル

作者のことはまるで知らなかったが、『文学全集を立ち上げる』(丸谷才一など)で評価が高かったこともあり読んでみた。
カルペンティエルはキューバの小説家。
この小説はハイチの歴史を舞台とした小説。
ハイチはかつてフランスの植民地とされていたが、奴隷だった黒人が反乱を起こし、黒人が統治するが、それがまた圧政を理由に反乱により失脚し、という興亡に、ブードゥー教をベースにした秘法やら変身やらが加わって、いわゆる「マジックリアリズム」的な色合いの濃い小説である。
小説としてはそれほど長いものではないが、各階級を代表する人物を中心に描いて、長いスパンの時間を描く。
時間がきちんと描かれていて、読み終わったあと、ここまで来てしまったんだな、と思わせる、よい小説特有の達成感がある。
ガルシア=マルケスのような猥雑さはなく、知的で端正な小説である。
読みやすい。

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