若松英輔 平凡社
「中学生の質問箱」シリーズの一冊。
だから、実は少し甘く見ていたのです。
いくら若松さんの本といえども、子ども向けなんだろう?と。
確かに読みやすい。
しかし、ここ数年で読んだ本ではベスト3に入るくらいのすばらしい本でした。
読む前ににはなぜ「詩を書く」ことを問題にしなくてはいけないのか、と思っていました。
読んだあとは、人はなぜ詩を書かないで生きていられるのか?と思ってしまうほど態度の変更を強いられます。
今まで、若松さんの本に導かれてさまざまな作家や詩人を知りました。
もちろんこの本で初めて出会う詩人たちはいます。
しかしこの本では詩人よりも「詩」そのものに初めて出会った気がします。
こういう本に早くめぐり会いたかったなあ。
どの部分を引き写しても胸にすとんと落ちてきます。
詩を書くためには詩を読まなくてはならない、というのはもっともらしい話ですが、かならずしもそうでなくてもかまわないと思います。むしろ、書くことが先になる、というのがほんとうではないでしょうか。
詩を読めない、とずっと思ってきました。
だけど書いてみればいいのです。
そう考えたら、詩は友だちのように思えてきます。
だけど、詩なんか書いたことがないし、書き出せない。
若松さんはこう言います。
詩の場合、「下手」でもいい、むしろ「下手」だからいい、ともいえます。下手だと感じるのは自分がおもったようには書けていないからです。
別のところから見れば、文字になったものよりもずっと豊かな何かを感じているから、それが言葉にならないことを残念に感じているのです。
こんなに素晴らしいことがあるでしょうか。詩は、書くことによって、書き得ないものを感じる営みです。
むしろ、書き得なかったことの方に、ほんとうの詩がある、といってもよいくらいです。
そして、自分では下手だと感じる詩でも、違う人が読むとそこにかけがえのないものを見出すことができます。
言葉は、書かれたときに完成するのではありません。読まれることによって新たに生まれるのです。
とにかく、詩を書いてみましょう。
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