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『海に住む少女』を読んだ

シュペルヴィエル

シュペルヴィエルの名前を知ったのは大岡信と谷川俊太郎の『対談現代詩入門』の中で、若い頃の両詩人が影響を受けた、というのを読んだからだった。
詩集を手に入れようと思ったのだけれど、絶版で、古本もとても高いから読めないと思っていたが、この短編小説集が新訳文庫で出たので読むことにした。
訳者が「苦しまぎれに「フランス版宮沢賢治」という言葉を使ったことがある」とあとがきで記しているが、たしかに宮沢賢治に通じるものがある。
動物が擬人的に書かれる手法、宇宙的、幻想的、宗教的な感覚。
『飼葉桶を囲む牛とロバ』は、イエス誕生の際のエピソード。イエスを守り続けて、そのまま死んでしまう牛の悲しくて美しい話。この一篇だけでも読んだ甲斐があった。
小説を引用しづらいので、あとがきに載っていた『動き』という詩を引用しておく。
だいたいこんな感じの小説です。
詩集を図書館で借りようかな。

動き
ふりかえった馬は これまで
誰も見たことのないものを見た
そして、再び草を食べ始めた
ユーカリの木のしたで
それは人でも樹木でもなく
牝馬でもない
木の葉をゆらしていた風の
なごりでもない
それは 二万世紀も前に
別の馬が見たもの
今日と同じこの時刻に
とつぜん振り向いて目にしたもの
人も馬も 魚も虫も このさき誰も
この大地がいつの日か
腕もない 足もない 頭もない
彫像の残骸に成り果てるそのときまで
もう二度と見ることのないもの

 

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