チャールズ・ブコウスキー 中川五郎訳
ブコウスキーは73歳で死んだ。
この本はブコウスキーが71歳から72歳まで書いた日記だ。
それまでタイプライターで執筆していたブコウスキーがMacを手にしたのを契機に日記を書き始めたのだという。
ブコウスキーというと無頼というイメージがあったが、老人であるブコウスキーは勤勉である。
競馬があれば必ず競馬場に車で通い、帰ってきてからMacに向かって執筆する。
執筆するときにはラジオでクラシック音楽を流しながらでないと書けない。
家には妻と九匹の猫がいて、猫がたまにMacにおしっこをかけて故障したりする。
年を取ってから始めたパソコンなのに、ブコウスキーはそれがないともう書けない。
私は二階に上がって、コンピューターの前に座った。私の新しい慰め相手だ。コンピュータを手に入れてからというもの、私の書くものはパワーも分量も倍増した。魔法の代物だ。ほとんどの人がテレビの前に座り込むように、私はコンピュータの前に座り込む。
だいたい、競馬が好きな人、というだけで少し信用してしまう。
ギャンブルをやらない人のほうがたぶん信用できるはずなんだが、競馬をやることでなにかのバランスを取ろうとする気持ちがよく分かる。
こんなじいさんになりたい、というよりは、も少し早くこんな人間になりたいものだ。
付き合いを少しずつ減らしていき、文章を書くことで自分を解放する。
毎日自分の頭で考えて生き、ついでに競馬をする。
たまに酒を飲む。
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