イングマール・ベルイマン監督
宗教的であり、神話的な映画である。
山の中で二人の男に若い娘が強姦され殺される。
娘の帰りが遅いと心配する家族のもとにその犯人たち(二人に加えて一緒にいた幼い少年)が泊めてもらいたいと訪れた。
男が売りたいと差し出した服は娘の着ていた絹の服で、父親は娘がこの男たちに殺されたことを知る。
肉切り包丁などで男たちを殺し、少年までもたたき殺してしまう。
山に捨てられていた娘を父が抱き上げると、その途端そこから水があふれ出す。
神話なので、シンプルなあらすじである。
しかし深い。
もともと宗教的な雰囲気が映画を包み込んでいるが、父親が犯人を殺す準備をし始めるあたりから荘厳な感じが深まっていく。
風呂に入って身を清めて(枝でぱしぱし身体を叩く!)、包丁を用意させ、といったひとつひとつの振る舞いが宗教的なのである。
これはすごい。
見ているうちに旧約聖書の世界に入り込んでいくようなのだ。
父親がまた彫刻みたいな顔をしていて威厳がある。
のっぺりした自分と比べるとなんという違いであろうか。
神に、娘が殺され、自分が復讐(しかも少年までも)したのを見ていたのに、なぜ何もしてくれなかったのか、と少しだけうらみつらみを言うが、それでも神を信じる、と言い続ける父親、そして奇跡のように娘の亡骸を抱き上げた瞬間にあふれ出す泉。
宗教についてうらやましく思えるのはこういう場面だが、映画は宗教以上にこういうことをリアルに描き出せるということがすばらしいのだ。
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