イングマール・ベルイマン監督
最近考えていることは夢と、ノスタルジー(もしくは後悔)と、死だが、この映画はそれをすべて網羅した映画だ。
主人公は79歳の老教授で、大学で名誉教授の称号を受けることになっている。
朝、棺桶から自分が自分を引きずり込もうとする悪夢を見て、飛行機で大学まで行く予定をキャンセルし、息子の妻とともに車で大学へ向かう。
その途中で若い三人の男女、壊れそうな中年夫婦と出会う。
ロードムービーの体裁だが、何よりも挿入される夢がすばらしい。
若い頃、つき合っていた従妹が裏切って自分の弟を選ぶという事件から生まれた夢。
妻が密通をしているのを見てしまった事件から生まれた夢。
そしてそれらの事件の根底にはが自分じしんの冷たさがあるということを思い知らされる夢。
自分の夢を振り返ると、たいていの夢では私はいつも無力だ。
だいたいにして~ができない、という状態に置かれている。
たとえばどうしても話すことができない、とか、電車に乗ることができない、とか。
この映画の夢はそれと似ていて、どうしても文字を理解することができないとか顕微鏡を見ることができない、とか、何よりも自分が見ているのにもかかわらず目の前で起きている事件に対して無力であったりする。
それを見ているとつらいけれど、夢らしさがきちんと画面にとらえられていて、どうしても目が離せない。
映画を見ている私、それは夢そのものの構造だ。
老年に向かうということは、基本的に悲しみの中で生きることを受け入れて、しかし、少しのノスタルジーと若者に対する希望によって生きることなのだろうか。
ベルイマン監督の作品は初めて見たが、すばらしい。
関係ないけど、スウェーデン語って初めてきちんと聞いた気がする。きれいな言葉だ。
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