幸村誠
このマンガも友だちから借りていた本でした。
いちど2巻まで読んだのですが(全4巻)、途中で内容が分からなくなって、しばらく放り出してありました。
で、二度目に読んだら、ようやくすらすらと意味が分かりました。
私の最大の欠点は、登場人物の顔が覚えられないのです。
現代のマンガを簡単に読み解くには少し年を取りすぎたみたいです。
日常生活自体も危なそうですが。
2070年代、近宇宙旅行が当たり前になっている時代。主人公のハチマキは宇宙のゴミであるデブリを回収する、いわば雪かきのような仕事をしています。
彼が宇宙に深く関わっていくことで、巨大な宇宙と自分とのつながりなど、哲学的な展開を見せます。
もちろん宇宙とのかかわりから「自分とは何か」「家族とは」といった哲学的主題がこのマンガの大きな要素ですが、私は「仕事」についてありありと描き出しているところに惹かれました。
宇宙での最高の仕事が木星往還船フォンブラウン号に乗り組むこと、それをハチマキは目標としてデブリの回収という、宇宙では底辺を支える仕事をしているわけですが、職業に貴賎なし、というあたりまえのことがこれだけきちんと描かれている本はあまりないように思います。
そして、仕事へのモチベーションとはどういうものであるべきなのか、ということも問うているように思います。
ハチマキは激しい上昇志向があって、それは科学自体が常に未知を激しく追究しつづけた、ということのメタファーになっているようです。
しかしタナベという女の子(私は最初に読んだときずうっと男の子だと思っていた)と出会ったり、自分の中のもう一人の自分、自分の中にいる象徴的な「猫」と向かい合ううちに、ひとりでがんばりつづけるのではなく、周囲の人との穏やかな日常に裏付けられていることが必要だ、と感じるようになります(違うかも知れませんが)。
仕事については私も考えますが、仕事を自己実現の場としてがんばりまくるのも、逆に生活の糧として割り切るのも、私には違和感があります(以前は私は後者で割り切ろうとしていましたが)。
仕事を通して、少なくても自分ひとりではないし、自分ひとりでは何もできない、ということがわかること、そして信頼からうまれるやりがいみたいなものが得られればいいのではないか、と今は感じるようになりました。
いずれにしても、登場人物のすべてに作者の愛が与えられていて、読み応えのあるいいマンガです。
友だちは、私が元気がないときこのマンガを読みなさい、と言って貸してくれました。
二度目に読んでようやくこのマンガのすばらしさに気付き、遅くなりましたけど、元気が少し出ました。
要はひとりではない、ということです。たぶん。
社会になじめず、森の中で行方をくらましてしまうフィーのおじさんは私じしんみたいに思えましたけどね。
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