『人生の短さについて』セネカ 茂手木元蔵訳(岩波文庫)
ちょいと疲れ気味で、うまくまとめる自信がないので、思いついたことを箇条書きにしときます。
・三つの文章が入っている。『人生の短さについて』『心の平静について』『幸福な人生について』
・表題作がいちばん面白い。
・紀元50年頃に書かれているが、ほとんど今の日本で通用する文章。比喩やら論理はまったく古びていない。西欧的な思考が普遍的なのか、それとも今の私たちの思考があまりにも西欧的なもののうえに成り立っているからか。よくわからない。
・快楽よりも徳を追究しなさい、という主旨。ストア派。欲を捨てなさい、という仏教の考え方とよく似ているような気がするが、これは本当に思いつき。
・快楽が自分の主人になってしまってはいけない、自分が快楽を飼い慣らさなくてはいけない。たぶん、そのとおり。
・しかしそのためにはいったいどうすればいいのか。よくわからない。
・セネカ自身も努力目標だ、と言っている節があり、その辺がけっこう救われる。自分自身がきちんと出来ていないから、そう言い続けるんだ、というのはよくわかる。悟り開いた人が上から言うよりは説得力がある。
印象に残った文章を引用しておきます。
われわれは短い人生を受けているのではなく、われわれがそれを短くしているのである。われわれは人生に不足しているのではなく濫費しているのである。(p10)
生涯をかけて学ぶべきは死ぬことである。(P22)
将来のことはすべて不確定のうちに存ずる。今直ちに生きなければならぬ。(P28)
ストア派というと快楽を悪と見ているみたいに思っていたけれども、むしろよりよく、というかおいしく、充実して生きるためには目先に快楽に惑わされたらかえって損だよ、と言っているように思う。
死後の幸福、なんてことを言わないので、宗教よりもはるかに生きるための指標としては有効なのではないだろうか。
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