Novel– category –
-
『競売ナンバー49の叫び』
トマス・ピンチョン 同じ本を繰り返し読むタイプではないのですが、この本は五回くらい読んでいます。 『重力の虹』や『V.』は自分としては一応読んだことにしていますが、難しすぎてほとんど読み飛ばしているのがほんとうのところ。 この小説はピ... -
『本物の読書家』
乗代雄介 講談社 引用がある文章は好きです。よいタイミングで引用が入ってくる文は、編集のすばらしい映画を見ているようです。著者とは別の声が、奥行きを出しているのかもしれません。評論では引用はあたりまえですが、小説でも例えば大江健三郎さんの... -
『血を売る男』
余華 飯塚容訳 河出書房新社 第二次世界大戦後の中国。 「許三観(シユイ・サンクアン)は町の製紙工場の繭運搬係だ」。 許三観は血を売ったお金で、油条(細長い揚げパン)美人と呼ばれている許玉蘭にごちそうして結婚にこぎつける。 二人は三人... -
『モナドの領域』
筒井康隆 新潮社 ある美術大学の近くで切り取られた女性の腕が見つかる。 その美大の近くのパン屋では、美大生のアルバイトが作った女性の腕を模したバケットが評判となる。 美大の結野教授はある日を境に、突然眼を「ふらふら」させながら初めて... -
『霊性の哲学』
若松英輔 角川選書 この本で章を立てて論じられるのは山崎弁栄(べんねい)、鈴木大拙、柳宗悦、吉満義彦、井筒俊彦、谺雄二です。 名前を知っていたのは鈴木、柳、井筒くらいですが、著書はきちんと読んだことはありません。 他にもたくさんの名前が登... -
『ダンシング・ヴァニティ』
筒井康隆 新潮社 主人公の「おれ」は美術評論家の男です。 小説はこのように始まります。 「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」浴衣姿の妹がおれの書斎に入ってきて言った。 書斎は裏庭に面しているので、前の通りの物音はほとんど聞こえない。そ... -
『服従』に服従する
『服従』 ミシェル・ウエルベック 河出書房新社 【あらすじ(ネタバレ)】 ユイスマンスの研究者である「ぼく」はパリの大学で教授を務めている。 女子学生と寝ては別れている。 前回の2017年の大統領選挙で「いよいよ右傾化を強めていく国で左翼の大統領... -
『騎士団長殺し』
村上春樹 あらすじ 「私」は肖像画の画家。妻と別れ、肖像画を描くことをやめ、友人の父で高名な日本画家である雨田具彦が小田原でアトリエとして使っていた一軒家に住むことになった。谷を隔てた豪邸に住む「免色」さんから法外な価格で肖像画を描いてほ... -
『知的生き方教室』
中原昌也『知的生き方教室』を読んだ。 本を読みながら笑うということはほとんどない。 かつて『VOW』という本が宝島から出ていたが、それ以来だと思う。 全編面白すぎるんだが、いちばんくだらなすぎる箇所を長く引用します。 笑顔でお辞儀を... -
『33年後のなんとなくクリスタル』
田中康夫『33年後のなんとなくクリスタル』(河出書房新社)を読んだ。 『なんとなくクリスタル』(=「もとクリ」)は、おそらく話題になってしばらくしてから図書館で借りて読んだと思う。 当時の評判としては、軽佻浮薄な小説、みたいな感じが大勢...