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『日本の漫画への感謝』

四方田犬彦 潮出版社

 

いままでに四方田さんの本は『「かわいい」論』、『ゴダールと女たち』という新書を読んだことがあります。

基本的に映画の人だという認識でしたが、漫画の研究もされていたのでした。

私は何も知らないなあ。

 

この本は、漫画家と原作者あわせて26名についての四方田さんによる「プライヴェートなエッセー」です。

この26名のうち、手塚治虫やちばてつや、梶原一騎といったところはもちろん知っていますが、半数以上の漫画家を知りませんでした。

もちろん世代が違うということもありますが、なにより漫画に対する情熱が違いすぎます。

 

四方田さんは、貸本屋の頃から現在に至るまでのスーパー漫画マニア。

自宅には『ガロ』や『COM 』が創刊号から残されているのはいうまでもなく、至るところで買いあさった漫画が段ボールに入れられ、床を覆い尽くしているのだそうです。

 

いっぽう私が所蔵するのはせいぜい『ドカベン』、『大甲子園』に『がきデカ』の一部、『動物のお医者さん』『めぞん一刻』くらいのもの。

基本的にテレビっ子だったので、四方田さんほど漫画に夢中になれなかったのです。

だからこの本に書いてあることは知らないことばかり。

ガイドブックを読むように、楽しく読めました。

 

水木しげるについての話に惹きこまれました。

私にとっては水木は『ゲゲゲの鬼太郎』のイメージしかありません。

もちろん、戦場で片腕を失ったことは知っていましたが。

水木は軍隊経験をもとにつぎつぎと作品を描いていきますが、そのうち『ゴジラ』のモチーフを使って「帰還者のグロテスクな変身」という主題を手に入れます。

続いてシリアスな戦場ものを書き、それを自らリメイクしながら、自分の作品への「メタレヴェルの批評」を成し遂げていきます。

「質的にも量的にも、水木しげるの戦記漫画の到達点」だという『総員玉砕せよ!』は少なくても読んでおかないといけないようです。

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山上たつひこさんは『がきデカ』以前に、『光る風』という「過激な反国家性が話題」となっていた作品を書いていたことも知りませんでした。

四方田さんはこう言います。

山上たつひこは常に人間ならざる他者を媒介として、人間とはなにかという問いを漫画の内側で思考してきた。その反ヒューマニズムにおいて、山上は同時代の手塚より一歩先んじていたと、私は考えている。

『がきデカ』の最後のコマがとてもギャグ漫画ではなかったことは知っていましたが、そもそもとてつもなく深刻な問題意識を持った漫画家だったのでした。

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私は何も知らないなあ。

 

他にも横山光輝、楳図かずお、赤塚不二夫などの分析は、原作を読んでいないのに興奮し、読みたくさせられます。

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