-
『退屈論』を読んでもまったく退屈しない
『退屈論』小谷野敦 「人間の不幸は、自分の部屋にじっとしていられないことだ」(パスカル。本書p228) 小谷野敦といえば著者には申し訳ないような気もするがやっぱり『もてない男』だが、私はむしろ『バカのための読書術』を読んで、ああ確かにわたしゃ歴... -
『走ることについて語るときに僕の語ること』を読んで走りたくなったけど、無理。
『走ることについて語るときに僕の語ること』村上春樹 村上春樹が自分が走ることについて書いた本だというので、村上朝日堂などのエッセイの流れに属するものだと思って軽い気持ちで読んでみたのだが、意外とそうではなくて、ちょっとした小説の手応えのあ... -
『ヴェネツィアに死す』を退屈しながら読み返す
『ヴェネツィアに死す』マン 岸美光訳 (光文社文庫) 学生の頃に新潮文庫で『ベニスに死す』を読み、そのあとヴィスコンティの映画を見た。 老人が少年に恋して死んでいく、という筋しか覚えていなかったが、映画で夏の海岸で老人が白いスーツを着てい... -
『橋本治という行き方』で読書について考えてみる
『橋本治という行き方』橋本治 ここ二ヶ月ほど、本を読むことができなかった。ばたばたしていたせいもあるし、暑かったせいもある。 ばたばたしていたというのは、急遽車を買い換えることになり、その選定のためにカタログやらをずっと読んでいなくてはい... -
「株式会社という病」を読んだ
『株式会社という病』平川克美 書店でタイトルが気になり、ぺらぺらとめくったら、その文体に引き込まれてするっと買ってしまった本。 私は勤め人だが、最近、会社で働く、ということはいったいどういうことなんだろう、と何の役にも立たない、しかし原理... -
『読む人間』を読んで読む人間になりたくなった
『読む人間』大江健三郎 大江健三郎は私にとってもっとも思い入れのある作家だ。 ほとんど文学というものに触れていなかった私が「文学」を読んでやろうじゃないか、と思って手に取ったのがなぜか大江健三郎『ピンチランナー調書』だった。 どうしてこの本... -
『白川静さんに学ぶ漢字は楽しい』はおどろおどろしく楽しい
『白川静さんに学ぶ漢字は楽しい』小山鉄郎 これは、漢字が持つ体系的なつながりを明らかにして文化勲章を受けた漢字学の第一人者・白川静さんに、漢字の成り立ちや体系を楽しく教えてもらった本です。 毎回、白川静さんに直接取材して、漢字の成り立ち... -
「今日の芸術」は今日も有効だ
『今日の芸術』岡本太郎 岡本太郎といえば、私たちの世代では「芸術は爆発だ」と本人が叫ぶ(叫んではいないな、しかし話す、というのでもないし)テレビCMのイメージが刷り込まれており、したがってわけが分からないことが書いてあるという先入観があっ... -
『プルーストを読む』を読んで読むことについて考える
『プルーストを読む-『失われた時を求めて』の世界』鈴木道彦 『失われた時を求めて』は集英社文庫で全13巻。 とりあえず揃えてみた。 しかしまだ全く手を掛けていない。 実は文庫になる前、単行本で出ているときに最初の2巻くらい買って読んでみたが... -
『百年の孤独』といってももちろん焼酎ではない
『百年の孤独』G・ガルシア=マルケス 鼓直訳 たぶん、高校生のときに図書館で借りて読んだように記憶しているが、今回じっくりじっくり舐めるように読み返して、高校生では相当適当に読み飛ばしたんだなあ、と思うほどに濃密な小説だった。 ここのところ...